相続登記をせず長期間放置した場合のリスク
相続が発生したにもかかわらず、相続登記をせずに長期間放置していると、様々なリスクが高まります。
例えば…
- 後から法的な問題点が発生…?
- 相続人同士で争いが勃発…?
- 次の世代に迷惑がかかる…?
- 津波などの災害時に自分の財産であることが証明できない…?
といったようなことが考えられます。
このようなリスクを避けるためには、適切な時期に相続登記を完了しておくことが重要な予防方法と言えるでしょう。
以下の事例は、よくあるご相談を事例化しています。
主人公は長男です。
長男の立場になって、読み進めてみてください。
相続開始時の状況
(相続開始時の状況)
- 実家の土地・建物は父名義。
- 父母が同居して暮らしていたが、父が死亡し相続開始。
- 相続人は、母、長男、二男、長女の4名。
- 相続人の仲も悪くなく、相続に関して何も問題はなかった。
そのときは問題ないが…
(各相続人の考え)
- 葬儀や様々な手続も一段落。実家の名義は父のまま。
- 地元に残った長男が母の老後をみることを期待し、弟・妹は長男が実家を相続することに特に反対する様子はなかった。
- 長男は、わざわざ家族間で遺産分割協議書まで作る必要はないと考え、馴染みのない登記手続も、とりあえず先送りに。
- 母は、細かい手続は子ども達に任せるつもりで、何も言わなかった。
10年経ち、事情は変わり…
(10年経ち、事情は変わり…)
- 10年が経ち、建物の老朽化が進む。
- 母も高齢となり、認知症が進んできた。
- 長男は、実家をリフォームし、母に快適な介護環境を整えたいと考えるようになった。
- その間、次男は交通事故で亡くなってしまった。
- 次男の相続人は、次男の妻と、その子(甥)二人。
- 甥1は、若くして父を亡くした生い立ちから、権利意識が強い様子。
- 甥2は、まだ未成年で、次男の妻がパートをしながら学費を捻出している。
- 長女は、自営業者である夫の経営がうまくいかず、お金に困っている。
長男にふりかかる負担
長男は、相続登記をするために、次のような問題点をクリアしていかなければなりません。
そして、長男が相続登記を完了できない場合、実家の相続登記の問題は、より複雑化して次の世代へ持ち越されることとなります。
≪長男が検討すべき問題点≫
1.法定相続人は誰か?
- 法定相続人全員で遺産分割協議を行う必要がある
2.各相続人は遺産分割協議を行うことが可能か?
- 母に十分な判断能力が残っているか?
- 成年後見制度の検討など
- 甥2の代わりに遺産分割協議を行う者がいるか?
- 特別代理人選任手続の検討など
3.各相続人の法定相続分はいくらか?
- 戸籍の調査など
- 傍系(兄弟姉妹)の戸籍を集める労力
4.遺産分割協議が整わない場合にどうするか?
- 遺産分割調停
- 親族間の感情的な問題へ発展?
- 弁護士への依頼
- 費用対効果の問題
5.遺産分割協議の内容を履行できるか?
- いわゆる「ハンコ代」
- 法定相続分に相当する金銭の請求など
このようなことが起きないよう、相続登記は適切な時期に行うことをお勧めしています。
なお、あくまでケースバイケースですので、個別に検討していく必要がございます。
ご自身について心配なことがある方は、お早めにご相談ください。