配偶者居住権の新設等(民法(相続法)改正2020年4月1日施行分)

民法(相続法)改正のうちの第三段階。

①2019年1月13日施行 民法のうち、自筆証書遺言の様式の緩和に関する規定
②2019年7月 1日施行 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(全般)
③2020年4月 1日施行 民法のうち、配偶者居住権の新設等に関する規定


配偶者居住権(1028条~、新設)

以下、概要。

遺産に属する居住用の「建物」を無償で使用収益する権利。
賃借権類似の法定債権。
配偶者固有の権利のため譲渡はできず(1032Ⅱ)、相続の対象ともならない。
建物の増改築や第三者による使用収益には、建物所有者の承諾が必要(1032Ⅲ)。
通常の必要費(固定資産税や通常の修繕費)は配偶者負担(1034)。

  • (成立要件)
    • 令和2年(2020)年4月1日以降に開始した相続
    • 相続開始時に遺産に属する「建物」が配偶者以外の者との共有でない
    • 相続開始時に当該建物に配偶者が居住していた
      • 部分居住であっても建物全体に対し使用収益権を取得する。
    • 配偶者に配偶者居住権を取得させる旨の遺産分割、遺贈又は死因贈与がされた
      • ※遺贈に限定されており、「相続させる旨の遺言」では配偶者居住権は成立しない。
  • (存続期間)
    • 原則、配偶者の終身(1030)
    • 遺産分割協議(家裁による遺産分割審判含む)、遺言で別段の定め可。
  • (対抗要件)
    • 配偶者居住権の登記のみ。
    • 登記事項は次のとおり。
      • ①存続期間 ex)「存続期間 配偶者の死亡時まで」
      • ②第三者に居住建物の使用または収益をさせることを許す旨の定め
    • 建物所有者はこの登記に応じる義務がある(1031Ⅰ)。
    • 登録免許税は評価額の2/1000。


配偶者短期居住権(1037条~、新設)

以下、概要。

上記配偶者居住権を短期間に限って強制的に成立させることで高齢者の居住環境を保護する趣旨。
無償の使用権のみであり、収益や処分の権限は有しない。
使用借権類似の法定債権。
帰属上の一審専属権であり譲渡不可、相続の対象にもならない。
通常の必要費(固定資産税や通常の修繕費)は配偶者負担(1041→1034)。

  • (成立要件)
    • 令和2年(2020)年4月1日以降に開始した相続
    • 相続開始時に遺産に属する「建物」に配偶者が無償で居住していた(×賃借)
      • 建物の一部のみの無償使用であった場合は、その部分のみが対象。
      • 被相続人の意思に関係なく、配偶者は当然に権利を取得する。
  • (存続期間)
    • ①「遺産分割により居住建物の所有者が確定した日」と「相続開始後6箇月経過日」のいずれか遅い日まで(1037Ⅰ①)
      • 最低6箇月を保証。上限はない。
    • ①以外「居住建物の所有権を取得した者(※)からの消滅の申入れから6箇月経過日」まで
      • ※居住建物の受遺者や配偶者が相続放棄した場合
    • 上記の期間中でも、配偶者居住権の取得や配偶者の死亡により終了