令和4年9月1日施行、商業登記規則等の改正の概要

1.支店の所在地における登記の廃止

令和4年9月1日から、支店・従たる事務所の所在地における登記を廃止(会社法930~932条を削除)。支店の所在地における登記記録は同日閉鎖される。
インターネットの普及により、支店の所在地の登記記録から本店の登記記録を検索する、というプロセスが不要となったため。
なお、あくまで支店の所在地における登記が廃止されただけであって、支店の登記自体は存続するため、本店所在地における支店の設置、移転又は廃止等の登記は引き続き必要。


2.電子提供制度の創設

電子提供制度(会社法325条の2~7、新設)

  • 定款の定めに基づき、株式会社(特例有限会社含む)の取締役が株主総会資料(種類株主総会資料含む)の内容である情報を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載し、株主に対して当該ウェブサイトのアドレス等を株主総会の招集通知に記載等して通知することで、株主の個別の承諾を得なくても、株主総会参考書類等を適法に提供したものとする制度。
  • 株主総会特別決議により定款を変更して導入する(会社法325条の2、466、309Ⅱ⑪)。導入するかどうかは原則、任意。
  • 定款には「電子提供措置をとる旨」を定めれば足りる(URLなどの情報は不要)。
  • 「電子提供措置をとる旨」は登記事項とされたため、設定・廃止する場合は定款変更の効力発生日から2週間以内に登記申請が必要(年月日設定、変更、廃止)。
    • 原則として定款の文言通りに登記される。
    • 添付書類は、株主総会議事録・株主リスト。
    • 登録免許税は、設定・廃止ともに3万円(ツ)。
  • 振替株式で振替機関が取り扱うものを発行する会社については電子提供措置の設定が義務づけられる(社債、株式等の振替に関する法律159条の2)。
    • この場合、設定みなし規定により、施行日から6か月以内に変更登記を申請する必要がある。(整備法10)

※電子提供制度を導入することができる法人(施行日時点)
・株式会社
・特例有限会社
・一般社団法人
・投資法人
・信用金庫、信用金庫連合会
・協同組織金融機関(優先出資者総会に係る部分)
・相互会社
・特定目的会社
・医療法人
・漁業協同組合、漁業生産組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、共済水産業協同組合連合会
・森林組合、生産森林組合、森林組合連合会
・農業協同組合、農業協同組合連合会
・農林中央金庫


3.会社代表者等の住所の非表示措置

住所非表示措置申出

  • DV被害者、ストーカー被害者、児童虐待の被害者等が事前に申出ることで、登記事項証明書又は登記事項要約書に記載された自然人の住所を非表示とすることが可能。
  • 非表示措置を希望しない旨の申出により終了。
  • 住所非表示措置をした年の翌年から3年経過で終了。再度の申出可。
    • 災害等により終了させないことが相当であると認めるときは終了しない。
    • 期間満了前に申出書に記載された住所宛に通知がなされる取扱い。
  • 役員重任登記や氏名変更登記のみでは終了しない。
    • 住所変更登記が申請されると終了するので、新たな住所につき住所非表示措置申出が必要。

※対象となる登記(施行日時点)
・株式会社
・特例有限会社
・持分会社
・一般社団法人、一般財団法人
・投資法人
・特定目的会社
・上記以外のその他の法人(各種法人)
・投資事業有限責任組合契約の登記、有限責任事業組合契約の登記
・限定責任信託


4.併記可能な旧氏の範囲拡大

旧氏の記録の申出(商業登記規則81の2)

  • 取締役、監査役、執行役、会計参与若しくは会計監査人又は清算人(役員等)の旧氏を登記記録に表示する申出が可能。
    • 旧氏:乙原、新氏:甲野の場合「甲野○○(乙原○○)」と記録される。
  • 役員等に関する登記申請に申出書を添付する方法のほか、登記申請書に申出事項を記載する方法も可能。
    • 登記申請とは別に、旧氏の記録の申出のみの単独手続きも可能。
  • 表示できる旧氏は一つ。
  • 氏の変更事由は婚姻に限られず、養子縁組前の旧氏、離婚後婚姻中の旧氏なども表示可。
  • 旧氏が既に表示されている者について氏の変更登記を申請する場合、表示される旧氏を当該変更登記申請直前に称していた旧氏に変更するよう申し出ることができる。
  • 旧氏の記録を希望しない旨の申出で終了。

※旧氏の記録が可能な法人(施行日時点)
・株式会社
・特例有限会社
・持分会社
・一般社団法人、一般財団法人
・投資法人
・特定目的会社
・各種法人
・投資事業有限責任組合契約の登記、有限責任事業組合契約の登記
・限定責任信託